こんにちは。水産高校船員養成学科卒業生のヨーイングです。
船乗りってどのような仕事をするのだろう、船乗りのなり方って、船乗りの階級って、給料はどのくらいか?といった様々な疑問がありますよね?
当サイトでは船乗りに興味がある方のためにこのような疑問にお答えします。
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船員とは?
船員とは、資格が必要な航海士(上位が船長。船長は船内上位でもある)や機関士(上位が機関長)、通信長・通信士やそれらの下で働く部員(航海士の下にいるのは甲板長、甲板員、機関士の下にいるのは操機長、操機員という)と呼ばれる資格のいらない人たちのことです。
その他にも船のコックである司厨員や事務をおこなう事務長、客船であれば船医がいます。
※船のコックは部員扱い。
・航海系の仕事内容(船の組織内では甲板部の職掌といいます)であれば、操船や船の航路の選定、出入港時の船をロープで岸壁のビットにつなぎとめる(係留する)作業などをおこなう。
係船柱(ビット)の例です。
船を係留する際のロープは危険で、下手をすればビットとロープに指をはさまれて指を失うことがあるそうです。
・機関系の仕事内容(機関部の職掌という)は、船の推進力になるエンジンや船内の電気を作る発電機、プロペラ軸、それらに使うポンプなどの監視、修理、操作などをおこなう。(筆者は水産高校のこの機関系の学科にいました)
・通信系の仕事内容(無線部の職掌という)は、無線機器の整備や陸上と連絡を取り合ったりなどする。通信士の求人は官公庁船の求人が多い。通信士の求人で有名なのは海上保安庁です。
船内組織について
船内には組織があります。
船長を頂点として、甲板部(航海士がいる所)、機関部(機関長、機関士がいる所)、無線部(通信長がいる所。通信長は航海士が商船の場合兼任していることが多い)があり事務長や船医(主に客船にいる)がいてその下に部員が各部署に所属しています。甲板部と機関部はどの船舶にも共通してある組織です。
甲板部の組織は、船長、一等航海士、二等航海士、三等航海士、甲板長、甲板員、操舵手になります。機関部は機関長、1等機関士、2等機関士、3等機関士、操機長、操機員、無線部は通信長、通信士です。船によっては、次席の航海士や機関士がいる場合があります。
船員になるには
船長や航海士、機関長、機関士、通信長、通信士(それらを総称して船舶職員といいます)になるには船の免許である海技免状というものが必要になります。
海技免状を取得し、船会社に船舶職員候補または船舶職員として採用されると船長、機関長、機関士や航海士になれます。
規定により船によっては、機関長にいきなりはなれない場合があるので注意が必要です。
海技免状は機関と航海は1級から6級まであり、1級が最高位の等級となります。資格の等級ごとに○級海技士と呼ばれます。
筆記試験と口述試験、身体検査があり、筆記試験は誰でも受けることができます。口述試験は船に乗った経験を2年または3年積み筆記試験に合格するか船員を養成している学校や施設を卒業することにより受けることができます。
試験内容は1級が難しく、級が下がるほど簡単になります。
3・4級海技士の免状を取得することにより、内航船(国内の海域を航行する船の総称)の機関長や船長までなれるレベルの資格で1級海技士は超大型船の船長・機関長になれるレベルの資格です。
5:6級海技士で湾内を航行する小・中型船の機関長、船長になることができます。
3級海技士は外国にいく船の航海士や機関士になるために最低限必要な資格となります。
海技士(航海)とよばれる航海士の資格の級別ごとの違いは、船の大きさや船の航行できる範囲(船の航行範囲は決まっています)により船長から3等航海士それぞれなれる限度が決まっています。
海技士(機関)と呼ばれる機関士の資格は、船に搭載されるエンジンの力がどれくらいか船の航行できる範囲により、機関長から3等機関士それぞれなれる限度が決まっています。
通信士の場合は、別途無線の資格が必要になります。(無線従事者免許といいます)
通信士になるために必要な無線従事者免許は総合無線通信士(無線従事者試験の中でも最難関の資格です)又は海上無線通信士となり、どちらも受験資格はありません。
この無線の資格と上述の無線従事者免許保有者のみがもつことができる船舶局無線従事者証明書を取得し6ヶ月以上船に乗り年齢が17歳9ヶ月以上であると通信士の資格である海技士(通信又は電子通信)試験の受験資格を得られます。
通信士の資格の等級は海技士(通信)が1級から3級、海技士(電子通信)が1級から4級まであります。
海技士(通信及び電子通信)の試験は筆記試験と身体検査のみです。その後免許講習を受けると免許がもらえます。
甲板長や甲板員、操機長、操機員、操舵手といった資格のいらない部員になるには船会社に部員として採用される必要があります。部員の仕事に興味がある方は国土交通省が運営しているサイト「海のハローワークネット」で求人検索してみてはいかがでしょうか?
船員になるための学校について
船乗りになるには、船員を養成している学校に行ったほうが、船員未経験・無資格で就職するより、船員養成学校から船会社に就職したほうが早く航海士、機関士や船長、機関長になれ初任給が多くもらえます。
大学や高専レベルの船員養成学校を卒業すれば日本郵船・川崎汽船・商船三井といった大手海運会社に船員として就職できるチャンスがあります。高校や短期大学レベルの学校を卒業した場合主に内航船の会社に就職できます。
下記より2024年時点での船員教育機関について紹介していきます。各学校の詳細については各学校のホームページを参照してください。
内航船や外航船(外国にいく船のこと)の船長・航海士・機関長及び機関士を目指せる学校
東京海洋大学(東京都)
東京海洋大学海洋工学部海事システム工学科(航海士志望者向け)又は海洋電子機械工学科・機関システム工学コース(機関士志望者向け)を卒業後、乗船実習科と呼ばれる課程で6ヶ月の実習を得たのち3級海技士の筆記試験免除を受けて口述試験を受験可能になります。社会人も入学可能です。
長崎大学
水産学部に入り指定の科目をまなび卒業後、1年間のカリキュラムの東京海洋大学海洋科学専攻科に進学、修了すると3級海技士(航海)の筆記試験免除、口述試験を受験可能になります。
鹿児島大学
「海技士養成プログラム」を水産学部在学中に選択して東京海洋大学海洋科学専攻科に進学すると3級海技士(航海)の口述試験が受験可能です。
東海大学(静岡県)
東海大学海洋学部海洋理工学科航海学専攻で「海技士関連指定科目」を受講し卒業後、6ヶ月の乗船実習課程に進学し修了後3級海技士(航海)の筆記試験免除を受けて口述試験が受験可能です。
東海大学で取れるのは船長、航海士の資格である3級海技士(航海)であり機関長、機関士の資格である3級海技士(機関)が取れる学科はありません。
神戸大学(兵庫県)
神戸大学海洋政策科学部で海技ライセンスコース航海学領域(航海士志望者向け)又は機関学領域(機関士志望者向け)を選択し卒業後、乗船実習科に進学、修了し3級海技士の筆記試験免除を受け口述試験を受験可能になります。
水産大学校(山口県)
水産大学校海洋生産管理学科(航海士目指すならココ)又は海洋機械工学科(機関士目指すならココ)を卒業後、水産大学校の1年間の専攻科船舶運航課程又は舶用機関課程を修了後3級海技士筆記試験免除となり、口述試験を受験できます。
商船高等専門学校(中学生が進学可能)
大島(山口県)・広島・弓削(愛媛県)・鳥羽(三重県)・富山の5つの商船高専があり、卒業後3級海技士(航海又は機関)の筆記試験免除となり口述試験を受験可能です。
海上技術学校(中学生が進学可能)
館山(千葉県)・口之津(長崎県)の2つの海上技術学校があります。
海上技術学校卒業後、附属する乗船実習科に進学、修了後4級海技士航海及び機関両方の筆記試験免除となり口述試験が受験可能です。
※唐津海上技術学校については2024年4月より海上技術短期大学校に改編されます。
海上技術学校は商船高専や東京海洋大学などと違い4級海技士航海及び機関の資格両方が取れることが特色です。
海上技術短期大学校(高校生・社会人が進学可能)
専修科(4級海技士航海と機関両方取れる)と航海専科(4級海技士航海のみが取れる)があり、専修科は宮古(岩手県)・清水(静岡県)・波方(愛媛県)の3つ、航海専科は小樽(北海道)・唐津(佐賀県)の2つがあります。
水産高校船員養成学科の本科(中学生が進学可能)・専攻科(船員養成学科の本科卒業生が進学可能)
水産高校本科を卒業すると5級海技士(航海又は機関)筆記試験免除、水産高校専攻科を卒業すると3級海技士(航海又は機関)口述試験が受験可能です。
※高等学校専攻科とは主に保育士や海技士、通信士などの資格を取るための学校です。私の高校の専攻科は2年制でした。認知度が低いため高専と間違えられることがあります。なお、高校専攻科は一般的に高卒扱いです。
船員を養成している施設・企業について(社会人向け)
船の学校を卒業していない社会人の方のための船員を養成している施設や企業があるので船に興味がある方は以下の学校に通ってみてはいかがでしょうか?
尾道海技学院・株式会社日本海洋資格センター
座学3ヶ月、社船実習2ヶ月を修了し卒業後6ヶ月間就職した会社で乗船経験を積むと6級海技士(航海又は機関)筆記試験免除となり、口述試験受験資格を得られます。
その他船員教育機関
海技大学校
海運会社(自社養成している日本郵船など)に採用された船員養成学校以外の一般大学などを卒業した人や海上技術短期大学校卒業生向けに3級海技士筆記試験免除、口述試験受験に向けた実習や座学をおこなったり、海技士資格保有者向けに上級資格の取得への教育や船員への再教育プログラムをおこなっている施設です。
船員の給料について
船業界を管轄している行政機関である国土交通省が公表している船員労働統計調査・一般船舶に乗り組む船員の年齢階層別1人1か月平均報酬等(2023、調査船員人数2270人)を参考に、外航船・内航船の船員の平均月間給与の基本給は
20代・・・約18〜20万円(諸手当含めると約33〜40万円)
30代・・・約20〜25万円(諸手当含めると47〜50万円)
40代・・・約27〜30万円(諸手当で51〜57万円)
50代・・・約34万円(諸手当61万円)
60代・・・約32〜34万円(諸手当で55〜56万円)
70代以降・・・約30万円(諸手当48万円)
となっています。なお、これらの数字にはボーナスは含まれていません。
諸手当含む船員の給与統計が高い背景として、船員教育機関を卒業している船員が多いこと、船員の階級ごとの給料は今回の統計には考慮されていないことなどがあげられます。
筆者が水産高校専攻科に在学していた際、船会社の人事担当者との面談会に行ったことがあり求人票を複数社もらい求人の給与額をみましたが上述の船員労働統計調査の諸手当含む給与額と大体同じでした。
まとめ
・船員とは機関士、航海士などの資格のいる船舶職員と甲板員などの資格のいらない部員のことをいう。
・船長や航海士、機関長、機関士になるための免許のことを海技免状といい、1〜6級まである。
・船乗りを目指すなら海事系大学、水産高校や尾道海技学院などの船員教育機関に行った方が近道
・船員の給与は高給である。